子どもの熱中症サインをチェック!すぐにできる応急処置も解説

熱中症対策 2025.5.29

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はじめに

子どもは熱中症になりやすいと言われていますが、その理由をご存じでしょうか?日本における熱中症患者は年間9万人以上おり、子どもの救急搬送も季節によっては連日、後を絶ちません。
この記事では、子どもが熱中症になりやすい理由と、予防のためにできること、もしものときの応急処置について、医師監修のもとでわかりやすくご紹介します。
 

参考:消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」

目次

熱中症とは

 

熱中症とは、「暑くて湿気の多い場所に長くいることで、体の中に熱がたまり、うまく体温を下げられなくなってしまう状態」を指します。熱中症はその重症度によってⅠ度の軽症、Ⅱ度の中等症、Ⅲ度の重症の3段階に分けることができ、段階ごとに必要な治療や対応が異なります。

参考:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」を元に熱中症ナビ編集部が作成

熱中症のリスク

熱中症が重症化すると、脳や脊髄などに後遺症が残ったり、頭痛や倦怠感などが長期間継続したりする恐れがあります。最悪の場合には死に至ることもあるため、十分な注意が必要です。
また、入院した場合の入院費は健康保険適用対象ですが、差額ベッド代や食事代などは健康保険適用対象外なので全額自己負担しなければなりません。

子どもの熱中症サインをチェック

 

子どもは熱中症になりやすいため、周囲の大人は子どもの熱中症サインを見逃してはいけません。まずは、子どもにどんな熱中症のサインが現れるのか、気をつけて見ておきたいポイントを紹介します。



熱が出ている

肌にふれ、いつもよりも体が熱いと感じたら、熱を測ってください。微熱が出ているときは、熱中症の初期症状かもしれません。もしも38.5℃以上の高体温であれば、すぐに救急車を呼びましょう。

汗のかき方がおかしい

大量の汗をかいている、または熱があるにもかかわらず汗をまったくかかないなど普段と汗のかき方が違うときも注意が必要です。熱中症の可能性が高く、適切な対応が必要になります。
夏の間は、特に子どもの体調変化に気を配るようにしましょう。

めまい・立ちくらみがみられる

めまいや立ちくらみがあるときは、熱失神と呼ばれる熱中症の症状かもしれません。熱失神は、体温を下げようと大量の汗をかき、体内の水分や塩分が不足することで起きる血流悪化の初期症状です。まっすぐ歩けないなど、歩行や運動に異変がみられる場合は、熱中症を疑ってみましょう。

頭痛・吐き気がある

頭痛や吐き気は、熱中症の中等度症状である熱疲労の一つである可能性があります。熱失神が起きた状態は血流が悪化しており、その後も水分や塩分の補給、身体の冷却が行われないと脳や消化管などの血流低下や臓器自体の温度上昇が起こります。その結果、頭痛や吐き気などの症状が現れます。
めまいや立ちくらみが改善しないときや、頭痛や吐き気などの症状が現れたときは、医療機関を受診し、適切な処置をすることが大切です。

筋肉痛・足がつる

筋肉痛や足がつる症状は、熱けいれんと呼ばれる熱中症の初期症状です。屋外での長時間作業やスポーツののち、塩分が補給されない場合に、足がつる「こむら返り」や手足のしびれ、手足の筋肉がピクピクするといった症状が現れます。

意識がもうろうとしている

意識がもうろうとしており、呼びかけに応じない場合や、けいれんがみられる場合は、熱中症の重症状態です。中枢機能に異常をきたしている状態であり、場合によっては命に関わることもあります。

子どもは熱中症になりやすい?

 

子どもは熱中症になりやすいと言われています。なぜ子どもは熱中症になりやすいのでしょうか?

照り返しの影響を受けやすい

気象観測では通常、1.2m〜1.5m地点での気温を計測します。子どもはそれよりも低い地点で、地面からの赤外放射を受けるため、注意が必要です。たとえば、気象観測の気温が32.3℃のとき、幼児の身長では35℃を超える気温となります。

 

参考:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」

ベビーカーも同様に地面との距離が近いため、ベビーカーの中が高温となり熱中症のリスクを高めます。子どもや乳幼児については特に熱中症対策を心がけましょう。

体温調節機能が十分に発達していない

12歳以下の子どもは、汗腺などの体温調節機能が未発達のため、特に注意が必要です。さらに、体重に対する体表面積が大人より大きいため、高温時や炎天下では深部体温が上がりやすい特徴があります。熱しやすい体格特性に加えて、体温調節機能が大きく影響し、子どもの深部体温は大人より上昇しやすく、熱中症のリスクが高まります。

体調の変化を上手に伝えられない

自己主張がうまくできず、暑さに対する感覚を大人に伝えられない子もいます。特に乳幼児の場合は、具体的な体調を言葉にするのは困難です。環境や状況を考慮し、子どもの様子を観察したり、声掛けをしたりなど周囲の大人が子どもたちを気にかけましょう。

子どもの熱中症を予防するためのポイント

 

子どもの熱中症を予防するために、周囲の大人や本人はどうしたらよいのでしょうか。ここからは、子どもの熱中症を予防するためのポイントを解説します。

こまめな水分・塩分補給を心がける

熱中症対策では、こまめな水分・塩分補給が欠かせません。飲み物はスポーツドリンクや経口補水液など塩分が入っている飲み物が望ましいです。
ただし、スポーツドリンクや経口補水液など、水以外の飲み物を水筒に入れて持ち歩く場合は、その水筒がその飲み物に対応しているかどうか、事前に確認するようにしましょう。

冷房や扇風機を適切に使用する

室内においても熱中症対策は必要です。エアコンや扇風機を適切に使用し、過ごしやすい温度を保ちましょう。エアコンを使用するときは、冷風が直接子どもにあたらないように風の向きや風量を調整します。また、同じ温度でも湿度が低いほうが過ごしやすいため、除湿器を活用したり、定期的に換気したりして対策するとよいでしょう。

子どもに持たせられるアイテムを使用する

暑い日や湿度の高い日は、ネッククーラー、冷感タオル、冷却シートを子どもに持参させるのもおすすめです。首元など太い血管があるところを冷やすと、効率良く体を冷やせます。また、外出時には塩飴をもたせて水分補給のときに一緒に摂取するように促すなど工夫しましょう。

通気性のよい服装を選ぶ

通気性のよい、熱のこもらない素材や薄い色合いの衣服を着ることで熱中症対策になります。下着は、吸湿性や速乾性のあるものを選ぶのがおすすめです。外出時は帽子をかぶったり、日陰を活用したりといった工夫が大切です。

熱中症警戒アラートをチェックする

熱中症警戒アラートを活用するのも熱中症対策の一つです。熱中症警戒アラートとは、危険な暑さが予想される場合に、熱中症への警戒を呼びかけるものです。発表された日には、高齢者や子どもは特に注意が必要になるため、周囲の人が積極的に声掛けをしましょう。外出はできるだけ控え、室内でもエアコンや扇風機を活用し涼しい環境で過ごし、熱中症対策を取ることが必要です。
熱中症警戒アラートの発表状況については、環境省の熱中症予防情報サイトをご覧ください。

学校や保育園の対策を確認しておく

学校や教育機関、保育園の熱中症対策が適切に行われているかを確認しましょう。多くの学校や教育機関、保育園では、暑さ指数を測定し数値に応じた対応を行っています。しかし、熱中症対策は各自治体によって異なり、子どもの熱中症による救急搬送や事故はなくなっていません。
特に、部活動や屋外活動のある子どもは熱中症のリスクが高いため、適切な対策が取られているか、ガイドラインに沿った対応になっているのかを再度確認しましょう。

子どもの熱中症に備えられる保険もある

昨今、熱中症に特化した保険が登場しています。一般的な熱中症保険では、保険期間中に熱中症になり、その治療を目的とした点滴注射・入院に対して給付金が支払われます。もしもに備えた選択肢として検討してみましょう。

子どもの熱中症に対する応急処置

参考:監修者への取材をもとに熱中症ナビ編集部にて作成

 

子どもが熱中症かな?と思ったら、早めの判断と処置が必要です。医師の監修にもとづいて、子どもの熱中症に対する応急処置を解説します。

意識がもうろうとしている場合は救急車を呼ぶ

呼びかけに応じない、意識障害がある場合は、直ちに119番に通報しましょう。判断に困る場合は、救急安心センター事業である#7119に連絡します。119番に通報した後は、涼しい場所に移動させ身体を冷やすなど、応急処置をして救急隊員を待ちます。救急隊員が到着したら、様子がおかしくなるまでの状況や症状を速やかに伝え、適切な処置を迅速に行ってもらえるようにしましょう。
※救急安心センターは地域によっては利用できない点に注意が必要です。

涼しい場所へ移動する

意識がはっきりしている場合、涼しい場所へ移動しましょう。冷房のある屋内や車内、屋外であれば風通しのよい日陰に移動します。水平を基本として本人の楽な体位を取らせ、衣服をゆるめて熱を逃がします。

頭や首筋、わき、太ももの付け根などを冷やす

衣服をゆるめて寝かせたら皮膚に水をかけて、うちわなどであおいで熱の放出を促しましょう。首の周りや脇の下、足の付け根を氷やアイスパックなどで冷やします。皮膚の直下にある血液を冷やすことが熱中症に有効です。濡れたタオルで全身を覆ったり、全身に水をかけ続けたり、頬や手のひら、足の裏を冷やす方法も効果があります。
熱中症はいち早く体温を下げることが重要になるため、身体の冷却をできるだけはやく行いましょう。

意識がはっきりしている場合は水分補給を行う

意識があり、吐き気や嘔吐がなければ、経口補水液やイオン飲料、食塩水などを飲ませましょう。意識がないときや吐き気・嘔吐がみられるときに無理やり水分補給を行うと、誤って水分が気道に流れ込む可能性があるため避けましょう。

まとめ

子どもは熱中症になりやすく、体調管理を自分で行うことも難しいため、周囲の大人の気配りが大切です。今回紹介した内容を参考に、子どもの熱中症を予防しながら夏を乗り切りましょう。

記事監修者

竹中 美恵子

亡き祖父の意志をつぎ小児科医の道へ進む。小児科の受診の約6割は皮膚疾患を合併して来院されることを目の当たりにし、小児科で臨床経験を積む傍ら、皮膚科と内科も学ぶ。その後、家族全員を1つの病院で診られるワンストップの病院を目指して姉妹で開業。家族全員のかかりつけ医として選んでいただけるよう、話しやすい雰囲気づくりと最新医療の導入に努め、日々研鑽を重ねている。

小児科・内科・皮膚科・アレルギー科難病指定医
小児慢性特定疾患指定医
子どもの心相談医
高濃度ビタミンC点滴療法認定医
キレーション認定医

この記事は、熱中症ナビ編集部が取材をもとに、制作したものです。

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(登)C25N0018(2025.5.13)  (登)DS250045(2025.5)