屋外で作業するときの熱中症対策を知ろう!リスクを下げるにはどうしたらいい?

熱中症対策 2025.5.29

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はじめに

猛暑の中での屋外作業は、特に熱中症のリスクが高まります。熱中症の発生要因は、高温多湿な環境や水分・塩分不足だけでなく、活動内容や休憩時間、当日の食事や体調なども関係します。屋外で活動をする方は、日頃から対策を徹底するだけでなく、熱中症の発症者が出たときに備えて、応急処置の流れや方法を理解しておくことも大切です。
そこで本記事では、建設業や製造業など屋外作業に従事する方に向けて、熱中症の発生要因や主な対策方法、発症時の応急処置などを一挙解説します。

目次

屋外作業にひそむ熱中症の危険性

例年、熱中症による緊急措置や救急搬送が多く発生します。特に猛暑のなか屋外での作業に従事している方は、熱中症リスクが高くなります。まずは熱中症を発症しやすい条件を把握し、熱中症対策の重要性を改めて確認しましょう。

屋外での仕事は熱中症になるリスクが高い

令和6年に厚生労働省が発表した「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によれば、死亡を含む休業4日以上の死傷者数が1,195人、うち死亡者数が30人となっています。業種別にみると、死傷者数の37%を建設業・製造業が占めており、死亡者数も多い傾向にあります。

 

参考:厚生労働省「令和6年職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」

熱中症の発生要因

熱中症が発生する要因には、環境要因、作業要因、衣類要因、時間要因、人体要因が存在し、それぞれ以下のような例が当てはまります。

 

環境要因
具体例として、気温が高い、風通しが悪いなどが当てはまります。日陰を作る、大型ファンを使うといった対策が考えられます。

 

作業要因
重量物を運ぶ、休憩時間が少ない、などが当てはまります。台車やリフターを使う、従業員同士で声をかけ合う、といった対策が考えられます。

 

衣類要因
衣類の通気性が低い、保湿性が高い、などが当てはまります。通気性の良い作業着を着用する、熱中症対策グッズを活用するといった対策が考えられます。

 

時間要因
梅雨明けなどの急に暑くなる時期や、長時間の暑熱負荷などが当てはまります。作業時間帯を見直す、作業中に休憩時間を設けるといった対策が考えられます。

 

人体要因
持病がある、水分や塩分の補給が不十分であるなどが当てはまります。定期的に健康診断を受ける、こまめに水分や塩分を補給するといった対策が考えられます。

 

参考:厚生労働省「共通「熱中症対策」安全衛生のポイント」

特に注意が必要なケース

上記の熱中症の発生要因のうち、特に屋外作業で注意しなければならないのは以下の3つです。該当する場合は、熱中症対策を徹底したうえで慎重に作業を進めましょう。

 

環境要因:高温多湿や直射日光、無風などの条件下での作業

衣服要因:通気性の悪い衣服や保護具を着用して行う作業

時間要因:まだ体が暑さに慣れていない時期(梅雨の合間や初夏)、急に暑くなった日、体が涼しさに慣れたお盆明けの作業など

屋外でできる熱中症対策

屋外作業をおこなう方は、適切な睡眠や食事をとり、適度な運動をするのはもちろんのこと、以下のような熱中症対策を取り入れましょう。

 

WBGT値(暑さ指数)を参考にする

こまめな水分・塩分補給を徹底する

熱中症対策グッズを活用する

1人での作業は避ける

熱中症に備えられる保険を検討する



WBGT値(暑さ指数)を参考にする

WBGT値とは、熱中症予防を目的とした暑さの指標です。作業場所での暑さ指標が基準値を超えると、熱中症になる可能性が高まります。そのため作業前にWBGT値を確認し、状況に応じた対策をとることが大切です。
WBGT値や熱中症警戒アラート情報は、環境省熱中症予防情報サイトにて発表されます。随時チェックしてみましょう。

こまめな水分・塩分補給を徹底する

作業前にしっかりと食事をして必要な塩分を摂取しましょう。また、作業中は大量に汗をかくため、こまめな水分・塩分補給が欠かせません。水分のみ補給すると、自覚症状がないまま体内の塩分割合が低下し、熱中症になるおそれがあります。塩分が含まれているスポーツ飲料や経口補水液なら30分ごとにコップ1杯分(200ml)程度飲み、水なら塩タブレットなどもあわせて摂取しましょう。

熱中症対策グッズを活用する

熱中症対策グッズを活用するのもおすすめです。たとえば衣服には、通気性の良いベストやジャケット、ファン付きの作業服や防暑タレ付きのヘルメットなどがあります。また、作業場所には以下のものを常備しておくのも大切です。

 

水分や塩分を補給できるもの

スマートフォン(熱中症警戒アラート確認用)

クーラーボックス

タイマー(作業や休憩の時間を区切るため)

作業用パラソル

1人での作業は避ける

単独作業だと、こまめな休憩や水分・塩分補給を忘れたまま作業を続けてしまったり、体調不良や異変に気づかず重症化してしまったりするリスクがあります。定期的な声かけや見守り、監督者による巡視をおこない、互いの体調に配慮しましょう。

熱中症に備えられる保険を検討する

屋外作業に従事している方は、どれだけ日頃から対策をしていても熱中症を発症するリスクがあります。熱中症になると、仕事に支障が出たり後遺症が生じたりする可能性もあるでしょう。

 

昨今は、熱中症による点滴注射・入院をサポートする、熱中症に特化した保険も登場しています。熱中症リスクが高まる時期だけ申し込むこともできるため、一つの対策として検討してみてもいいでしょう。

熱中症に対する応急処置

どれだけ注意を払っても、熱中症が発症してしまうこともあります。そのため、発症時の応急処置を理解し、社内で事前に共有しておくのが大切です。

風通しの良い木陰に移動する

発症者が出たら、まずは冷房のある屋内や風通しの良い木陰など、涼しい場所へ移動します。そして足を少し高くした状態で寝かせ、安静にさせましょう。このとき、体から熱を逃がすために衣服をゆるめるのも大切です。

首やわき、太ももの付け根を冷却する

体温調節機能がうまく働かなくなると、暑くても汗が出なかったり皮膚温度が下がらなかったりして体温の高い状態が続き、熱中症が起こります。症状改善のためには、太い血管が流れている場所を冷やして体温を下げる「体表冷却」をおこないましょう。

 

まずは保冷剤や冷えたペットボトルにタオルを巻いたものや、冷たい水で濡らしたタオルを用意します。そして両側の首筋やわき、太ももの付け根、難しい場合は顔や両腕、足や手のひらなどに当てて冷やしましょう。

意識があれば、水分や塩分を補給する

意識がはっきりとしており、かつ吐き気や嘔吐などの症状が見られなければ、水分・塩分補給をおこないましょう。熱中症は、汗をかいて体内の水分・塩分が不足した際の脱水状態がきっかけとなります。そのため症状を改善させるには、適切な量の水分・塩分を摂取する必要があります。

 

水分補給のみでは体内の塩分割合が低下してしまうため、経口補水液や食塩水など、100mlあたり0.1g〜0.2gの食塩が含まれる飲み物を用意しましょう。大量に汗をかいたあとに水分のみを補給し、熱けいれんが起きているなら、スポーツドリンクに塩を足したり食塩水の塩分濃度を高くしたりして、不足した塩分を補いましょう。

意識障害がみられたらただちに119番

呼びかけに応じなかったり意識がもうろうとしたりする場合は症状が重く、応急処置だけでは回復しない可能性があります。そのため、ただちに119番で救急車を要請してください。

 

救急車が到着するまでの間に、当時の状況や応急処置の内容などを整理しておきましょう。また、発症者の氏名や生年月日の分かるものや緊急連絡先、荷物もまとめておきます。なお、救急搬送すべきか判断に迷ったら「#7119」で救急安心センター事業に連絡してみましょう。

 

※救急安心センターは地域によっては利用できない点に注意が必要です。

十分な休息をとる

症状が比較的軽く、応急処置によって改善が見られれば、帰宅して十分に休み回復に努めましょう。もし体調不良が続くなら、当時の状況を知っている人が付き添ったうえで医療機関を受診しましょう。

まとめ

建設業や製造業などの屋外作業では、特に猛暑時の熱中症リスクが高くなります。しかしながら、熱中症の要因は暑さだけではなく、作業内容や衣類、本人の体調など様々なので、リスクとなる要因を減らすことが大切です。

それでも熱中症を発症してしまう可能性はあります。場合によっては救急車の要請など迅速な対応が求められるため、応急処置の流れや方法を事前に社内で共有しておきましょう。

記事監修者

田嶋 美裕

循環器内科医。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などの循環器疾患のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病全般の治療に携わる。

日本循環器学会専門医
日本内科学会認定内科医

この記事は、熱中症ナビ編集部が取材をもとに、制作したものです。

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