熱中症搬送が多い場所や月をランキング形式で解説!予防方法も知ってリスクに備えよう

熱中症対策 2025.5.29

この記事は約8分で読めます!

はじめに

暑い季節が来ると、連日のように「猛暑日」「熱帯夜」といったワードを見聞きするのではないでしょうか。そんな時期に欠かせないのが熱中症対策です。
この記事では、熱中症搬送が多い条件をランキング形式で解説し、熱中症の予防方法についても紹介します。

目次

【ジャンル別】熱中症で搬送が多い条件ランキング

 

熱中症による搬送がどんなタイミングで起きているかを知っておくと対策がしやすくなります。
ここでは、熱中症で搬送者が多かった条件を場所とスポーツ、月に分けて解説します。

救急要請される熱中症の発生場所

救急要請される熱中症の発生場所別では、住居、道路、公衆(屋外)の順で救急要請されやすい結果となりました。令和6年には9万7,578人の方が熱中症により救急搬送され、住居(敷地内すべての場所を含む)での発生が3割以上を占めています。
住居での熱中症は、室内にいる間に湿度や温度が上昇してしまうケースや、夜中にエアコンを使用せずに寝ることで起こるケースなどが挙げられます。

 

参考:消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」

熱中症の発症者が多いスポーツ

高校での熱中症発症件数のデータをもとにすると、野球、サッカー・フットサル、バスケットボール、テニス(含ソフトテニス)、持久走・長距離走の順で発症件数が多い結果となりました。

 

野球は、高温多湿の屋外で長時間活動することに加え、ユニフォームにより熱がこもりやすく、熱中症が発生しやすいといえます。さらに、試合が長引くと守備の選手が長時間炎天下にさらされ、水分補給ができない時間が長引くリスクがあります。

 

サッカーやフットサルは、常に走るため、高温多湿の環境では汗をかきやすく熱中症になりやすい競技です。また、サッカーグラウンドは芝生の保全のためにスポーツドリンクの持ち込みができないところもあります。

 

参考:独立行政法人日本スポーツ振興センター「学校等の管理下の災害 [令和6年版]」

熱中症による救急搬送者が多い月

「令和6年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、令和6年の月別の救急搬送者数では、7月がもっとも多い43,195人、次いで8月が32,806人、9月が11,503人、6月が7,275人の順となっています。
7月、8月はもちろんですが、6月、9月など暑さのピークではない月でも熱中症による救急搬送が多発しているため、十分に注意が必要です。

 

参考:消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」

熱中症に特に注意が必要な人は?

熱中症においては、子どもや高齢者、屋外作業をする人、スポーツに関わる人などは特に注意が必要です。ここからは、熱中症に特に注意が必要な人の特徴を詳しく解説します。



子どもや高齢者

子どもは体温調節機能が十分に発達していないため、汗をかく能力も未発達です。さらに、体重に比べて体の表面積が広いため周囲の環境の影響を受けやすいことも熱中症の危険性を高める要因といえます。

また、身長が低い幼児やベビーカーに乗った赤ちゃんは、高温化した地面からの照り返しの影響を強く受けます。体温調節がうまくできない乳幼児は特に注意が必要です。

 

高齢者は、加齢により暑さに対する感覚機能が低下しており、体の調節機能も低下しています。体内の水分量が減少してものどの渇きを感じにくくなるため脱水状態になりやすく、室内にいても熱中症のリスクが高まります。高齢者は熱中症対策や周囲のサポートが必要不可欠です。

屋外作業を実施する人

夏場に屋外で長時間作業をする際は、熱中症の危険性が高まります。保護服や通気性の悪い服で作業をする人や直射日光を浴びる建設業、警備業などの方は特に注意が必要です。

厚生労働省が発表した「熱中症の業種別発生状況(2020〜2024年)」でも、建設業、次いで製造業、運送業、警備業で熱中症が多く発生していることがわかります。

 

参考:厚生労働省「職場でおこる熱中症」

室内や車で過ごす人

熱中症が発生しやすい場所は、住居などの室内です。特に高齢者や子どもは室内での熱中症対策をとらなければなりません。キッチンで火を使う人も、蒸気により湿気が発生し高温多湿環境になるため、常に換気扇を回したり、室温を調節するなど対策を取りましょう。

さらに、寝ている間に起こる夜間熱中症の対策も大切です。夜間は、昼間に壁や天井に蓄えられた熱が放射熱となり、室温を高くしてしまいます。睡眠時に汗もかくため、脱水状態になりやすく、熱中症のリスクが伴います。脱水状態を予防するため寝る前と朝起きてからコップ一杯のお水を飲むとよいでしょう。

 

また、車内は直射日光が当たると、外気温にかかわらず温度が上昇してしまうため注意が必要です。たとえ短時間であっても、お子さんやペットを車内に残して車から離れてはいけません。

スポーツに関わる人

スポーツはプレーするときだけでなく、観戦中も熱中症に注意が必要です。初夏や梅雨の晴れ間、梅雨明け後に急に暑くなった日、5月の暑い日などまだ体が暑さに慣れていない時期は、特に熱中症になる危険性が高まります。スポーツをする人も観戦する人も、熱中症対策をしっかり行いましょう。

熱中症の予防方法は?

最後に、熱中症の予防方法を紹介します。

こまめに水分補給する

室内でも屋外でも、のどが渇いていなくても、こまめに水分補給をすることが大切です。水分が失われている起床時や外出時、入浴前後には特に水分補給をしましょう。カフェインを含む飲み物やアルコールは利尿作用があり水分を出してしまうため、熱中症予防に適していません。
水分は、スポーツドリンクや経口補水液などをこまめに飲むのがおすすめです。

塩分摂取する

熱中症予防には、塩分の補給も必要です。スポーツドリンクや塩飴などを摂取するようにしましょう。汗をかくと体内のナトリウムも同時に排出してしまうため、汗をかきやすい夏季シーズンは食塩水や経口補水液などで水分・塩分を補うことが大切です。経口補水液は塩分と糖分が入っているため、水分の吸収がスムーズになります。

経口補水液の作り方は、以下を参考にしてください。

 

<経口補水液の作り方>

・材料

  •  :1リットル

  •  砂糖:40g(大さじ4と1/2杯)

  •  :3g(小さじ1/2杯)

 

・作り方

1リットルの水に、砂糖40gと塩3gを入れて混ぜながら溶かす。お好みでレモンなどの柑橘果汁を入れてもよい。

 

参考:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」

睡眠環境を整える

睡眠不足は翌日の眠気や疲労を増加させ、日中活動に影響を与えます。睡眠不足の状態で運動すると体温調整機能が低下し、熱中症のリスクを高めます。

 

25℃~26℃程度が室内の適温と言われており、夏場の暑い日には特に睡眠環境を整えることが大切です。通気性や吸水性のよい寝具を使い、エアコンや扇風機を活用して寝室を適温に整え、寝ている間の熱中症を防ぎましょう。

暑さに適応しやすい体をつくる

対策の一つに「暑熱順化」があります。暑熱順化とは、体が暑さに慣れることを指します。暑熱順化が進むと、発汗量や皮膚血流量が増加するため、体から熱を逃がす力が強くなり暑さに適応しやすい体になるというわけです。

 

暑熱順化には、以下のような方法が有効です。

 

ウォーキング:30分を週5日程度

ジョギング:1回15分を週5日程度

サイクリング:1回30分を週3日程度

 

続けられる対策を日常生活の中に取り入れてみましょう。

※暑熱順化には一般的に数日から2週間程度かかり、個人差があります。

 

参考:厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」

暑さ対策をする

室内でも屋外でも意識して暑さ対策を行うとよいでしょう。

 

屋外を歩くときはなるべく日陰を歩く

帽子や日傘を利用して直射日光を避ける

屋内ではすだれやブラインド、カーテンなどで直射日光を避ける

通気性のよい服装で出かける

エアコンや扇風機を適度に使用し室内を適温にする

ネッククーラーを利用して首を冷やす

保冷剤や氷、冷たいタオルなどで体を冷やす

暑さ指数(WBGT)※を確認してから出かける。暑さ指数が高いときは外出を控える

 

※暑さ指数(WBGT)とは、熱中症リスクを判断する数値です。気温、湿度、日射・輻射(赤外放射)、風の要素をもとに算出します。暑さ指数をもとにした、熱中症のリスクと活動の注意点は、以下のとおりです。

参考:日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針 Ver.4」を元に熱中症ナビ編集部が作成

熱中症に特化した保険も登場している

 

熱中症にはさまざまな原因があり、どんなに入念な対策を取ったとしても、身の回りからすべてのリスク要因をなくすのは難しいのが現実です。

昨今では、熱中症による点滴注射・入院などをサポートする、熱中症に特化した保険も登場しています。熱中症対策の一環として検討してみてもよいでしょう。

まとめ

意外にも室内での救急要請が多いなど、熱中症は思わぬ場所やタイミングで起こりうるものです。この記事を参考に、熱中症による救急搬送が起きやすい時期、場所、状況を確認し、対策しておくことで、熱中症になるリスクを下げて活動することが重要です。

記事監修者

田嶋 美裕

循環器内科医。狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈などの循環器疾患のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病全般の治療に携わる。

日本循環器学会専門医
日本内科学会認定内科医

この記事は、熱中症ナビ編集部が取材をもとに、制作したものです。

掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。

記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

(登)C25N0017(2025.5.13)  (登)DS250047(2025.5)